肩が痛い原因と病気一覧|早期対処で悪化を防ぐ方法
肩の痛みを感じたときに考えられる原因や関連する病気、正しい対処法について、医療的根拠をもとにわかりやすく解説します。
肩は複数の関節、筋肉、腱が複雑に組み合わさった部位で、日常動作で最も可動域が大きい関節の一つです。そのため痛みの原因も多岐にわたりますが、一般に「肩が痛い」という場合、大きく分けて2つの種類があると思います。
肩関節は上腕骨、肩甲骨、鎖骨の3つの骨で構成される球関節で、360度の動きが可能です。この複雑な構造により、筋肉や腱への負担が集中しやすく、炎症や損傷が起こりやすい部位となっています。特に腱板と呼ばれる4つの筋肉群は、肩の安定性を保つ重要な役割を担っており、ここに問題が生じると痛みや可動域制限が現れます。
長時間の座りっぱなしや同じ姿勢での仕事、スマートフォンを見る習慣は肩周りの筋肉に過度な負担をかけるため、肩甲骨の動きが制限され、筋肉が緊張し続けるため、血行が悪くなります。血行が滞ることで疲労物質がたまりやすくなり痛みやだるさなどの症状が生じやすくなります。
40歳を過ぎると、関節軟骨の弾力性が低下し、腱の柔軟性も徐々に失われます。また、筋力の低下により肩関節の安定性が損なわれ、日常動作でも負担がかかりやすくなります。さらに、血流の悪化により組織の回復力が低下し、小さな損傷でも修復に時間がかかるようになります。これらの要因が重なり、中高年以降に肩の痛みを訴える方が増加します。
急性の肩の痛みは、転倒や運動時の急激な動作により突然発症し、炎症を伴う強い痛みが特徴です。一方、慢性痛は日常の繰り返し動作や姿勢の悪さにより徐々に進行し、鈍い痛みが持続します。急性痛では安静と適切な初期治療が重要で、慢性痛では根本的な原因の改善と継続的なケアが必要です。治療アプローチも大きく異なるため、痛みの性質を正しく把握することが重要です。
痛みを感じた初期段階では、無理をせず肩への負担を軽減することが最も重要です。急性期には適切な安静を保ち、炎症が強い場合は冷却療法を行います。しかし、長期間の完全な安静は関節の拘縮を招く可能性があるため、痛みの範囲内で適度な動きを維持することも必要です。また、姿勢の改善や作業環境の見直しにより、再発を防ぐことができます。早期に専門医に相談し、適切な診断と治療指針を得ることで、慢性化を防ぐことができます。
肩の痛みは単なる筋肉疲労から重篤な疾患まで、様々な原因で生じます。症状の特徴を理解し、適切な医療機関での診断を受けることが重要です。
腱板は、腕の骨(上腕骨)と肩甲骨をつなぐ板状の腱で、腕を上げたり下げたりするときに、上腕骨頭と肩甲骨がずれないように保重要な機能を有しています。その腱板を断裂すると「腱板断裂」と呼ばれます。40歳以上の男性に多く発症し、発症年齢のピークは60代といわれています。明らかな外傷によるもの(①外傷性)は半数で、残りははっきりとした原因がなく日常生活の動作の中で断裂が起きます。(②非外傷性)
石灰沈着性腱板炎は腱板内にリン酸カルシウム(いわゆる石灰)が沈着し、急激な痛みが出るものです。40~60代女性に多く、可動制限も生じるのが特徴です。痛みは夜間に悪化することが多く、腕を動かすことができないほど強い場合もあります。石灰がなぜ腱板に沈着するのか、はっきりした原因はわかっていませんが、次の要因が考えられます。
肩関節を取り囲む関節包や滑液包に炎症が生じ、痛みと可動域制限をきたす疾患です。40~60歳代に好発し、明確な原因なく発症することが多いです。炎症期、拘縮期、回復期の3段階に分かれ、全経過に1~2年要することが一般的です。夜間痛、可動域制限(特に外転、外旋)、日常動作の障害が主症状です。適切な運動療法と薬物療法により、多くは保存的に改善しますが、早期からのリハビリテーションが重要です。
狭心症や心筋梗塞の際に、左肩から左腕にかけて放散する痛みが生じることがあります。これは関連痛と呼ばれ、心臓の痛み信号が脊髄レベルで肩の感覚神経と混線することで起こります。特に糖尿病患者では典型的な胸痛がなく、肩の痛みのみで心疾患が発症することもあります。息切れ、胸部不快感、冷汗などの随伴症状がある場合は、緊急に循環器科受診が必要です。心電図検査が確定診断の一助となります。
頸椎椎間板ヘルニアや頸椎症性神経根症により、首から肩、腕にかけて痛みやしびれが生じることがあります。また、胸郭出口症候群では、鎖骨下の神経血管束が圧迫され、肩から手指にかけての症状が現れます。神経由来の痛みは、電気が走るような鋭い痛みやしびれが特徴で、首の動きや腕の位置により症状が変化します。MRI検査や神経伝導速度検査により診断が確定し、症状に応じて保存療法から手術療法まで治療選択肢があります。
肩の痛みの中には、早急な医療介入が必要な危険な症状があります。適切な判断基準を知り、重篤な合併症を防ぐことが重要です。
夜間痛は炎症性疾患や悪性疾患の重要なサインです。正常な筋骨格系の痛みは安静により軽減しますが、炎症や感染、腫瘍による痛みは体位に関係なく持続します。特に就寝時に痛みが増強する場合は、石灰沈着性腱板炎、感染性関節炎、悪性腫瘍の可能性を考慮する必要があります。睡眠が妨げられるほどの痛みが3日以上続く場合は、速やかに整形外科を受診し、血液検査や画像検査による精査が必要です。
突然の可動域制限や脱力は、神経損傷や重篤な軟部組織損傷を示唆します。腱板の完全断裂では、腕を持ち上げることができなくなります。また、腋窩神経や長胸神経の麻痺では、特定の筋肉に脱力が生じます。脳血管障害による片麻痺の初期症状として肩の脱力が現れることもあります。急激な機能低下は不可逆的な損傷につながる可能性があるため、症状出現後24時間以内の専門医受診が推奨されます。
発熱、腫脹、熱感を伴う肩の痛みは、細菌感染による化膿性関節炎や骨髄炎の可能性があります。特に糖尿病、免疫抑制状態、関節リウマチなどの基礎疾患がある方は感染リスクが高くなります。化膿性関節炎は数時間から数日で関節破壊が進行する緊急疾患です。体温38度以上、患部の著明な腫脹と熱感、白血球数やCRP値の上昇が見られる場合は、即座に救急外来を受診し、関節穿刺や血液培養による診断と、抗生物質による治療開始が必要です。
転倒や衝突などの外傷後に生じた肩の痛みでは、骨折、脱臼、靱帯損傷の可能性があります。上腕骨近位端骨折は高齢者に多く、肩関節脱臼は若年者のスポーツ外傷として頻繁に見られます。また、鎖骨骨折や肩鎖関節脱臼も肩の痛みの原因となります。外傷後は患部を固定し、できるだけ早期にX線検査を受ける必要があります。特に変形や異常な可動性がある場合は、整復処置が緊急に必要な場合があるため、救急外来への受診が推奨されます。
糖尿病患者では、糖尿病性肩関節周囲炎により重篤な関節拘縮が生じる可能性があります。関節リウマチ患者では、炎症の波及により多関節に症状が拡大することがあります。また、ステロイド長期使用者では、感染症に対する抵抗力が低下しているため、軽微な症状でも重篤化する危険があります。これらの基礎疾患を有する方は、肩の痛みや機能障害を軽視せず、早期に主治医や専門医に相談し、基礎疾患との関連性を評価してもらうことが重要です。
医療機関では、詳細な問診と身体診察により病態を把握し、必要に応じて画像検査を行います。診断に基づいて段階的な治療を選択します。
X線検査では骨折、脱臼、骨棘形成、関節間隙の狭小化、石灰沈着などを評価できます。MRI検査は軟部組織の詳細な観察が可能で、腱板断裂、関節唇損傷、滑液包炎、筋肉内血腫などの診断に有用です。超音波検査は低侵襲で動的評価が可能であり、腱板の部分断裂や滑液包炎の診断に活用されます。CT検査は骨折の詳細な評価や手術計画立案に使用されます。これらの検査結果を総合的に判断し、最適な治療方針を決定します。
急性期には安静、冷却を基本とします。消炎鎮痛剤の内服により炎症と痛みを抑制し、症状に応じて湿布薬も併用します。物理療法として、温熱療法、電気治療、超音波療法などがあり、血流改善と筋緊張緩和に効果があります。装具療法では、三角巾や肩外転装具により患部を固定し、治癒を促進します。保存療法は副作用が少なく、多くの肩疾患で第一選択となる治療法です。
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は炎症と痛みを同時に抑制する効果があります。ロキソプロフェン、イブプロフェン、ジクロフェナクなどが代表的です。胃腸障害や腎機能への影響に注意が必要で、PPI(プロトンポンプ阻害薬)の併用を検討します。ステロイド関節内注射は強力な抗炎症効果があり、五十肩や腱鞘炎に有効です。ヒアルロン酸注射は関節軟骨の保護と潤滑作用により、変形性関節症に有効性が報告されており、症状の改善が期待できます。ただし効果には個人差があります。注射療法は効果発現が早い一方、感染リスクがあるため適応を慎重に判断します。
理学療法は病期に応じて段階的に実施します。急性期は痛みの軽減と炎症の抑制を目標とし、亜急性期から可動域訓練を開始します。慢性期には筋力強化と機能改善を重点的に行います。肩甲骨周囲筋の強化、姿勢改善、動作指導により、根本的な問題解決を図ります。ホームエクササイズの指導により、治療効果の維持と再発予防を目指します。理学療法士による専門的な評価と個別的なプログラム作成により、効率的な機能回復が期待できます。
保存療法で改善しない腱板完全断裂、反復性肩関節脱臼、重度の変形性関節症などが手術適応となります。関節鏡手術は低侵襲で、腱板修復、滑液包切除、関節内清掃などに用いられます。人工関節置換術は関節破壊が進行した症例に適応され、除痛と機能改善が期待できます。骨切り術は関節面の向きを調整し、生理的な関節機能の回復を図ります。手術は最後の選択肢ですが、適切なタイミングで実施することで良好な結果を得ることができます。術後リハビリテーションの重要性も十分理解しておく必要があります。
軽度から中程度の肩の痛みに対して、適切なセルフケアを行うことで症状の改善と悪化防止が期待できます。ただし、症状が悪化する場合は専門医への相談が必要です。
肩甲骨周りのストレッチは、僧帽筋、菱形筋、前鋸筋の緊張を緩和し、血流を改善します。各ストレッチは15~30秒間保持し、痛みを感じない範囲で実施します。朝起床時と就寝前の実施により、筋肉の柔軟性維持と痛みの軽減が期待できます。無理に伸ばすと逆効果になるため、心地良い程度の強さで行うことが重要です。


急性期(受傷後72時間以内)で炎症徴候(腫脹、熱感、発赤)がある場合は冷却療法を選択します。氷嚢やアイスパックを15~20分間患部に当て、1~2時間間隔で繰り返します。慢性期や筋肉のこりによる痛みには温熱療法が有効で、入浴、温湿布、カイロなどで血流を促進します。温熱療法は筋肉の緊張緩和と代謝改善により、治癒を促進します。どちらを選択すべきか迷う場合は、まず冷却を試し、症状の変化を観察することをお勧めします。
デスクワーク時は、モニター位置を目線の高さに調整し、キーボードとマウスは肘が90度になる位置に配置します。背筋を伸ばし、肩甲骨を寄せる意識を持ち、1時間ごとに立ち上がって肩を回す運動を行います。睡眠時は仰向けまたは健側を下にした側臥位を基本とし、患側の腕を支えるクッションを使用します。日常生活では、重い荷物を持つ際は両手で分散し、片側への負荷を避けます。正しい姿勢の習慣化により、肩への負担を大幅に軽減できます。
【正しい姿勢】・【悪い姿勢】とは?セルフチェックしてみましょう!

洗濯物を干す、高い棚から物を取る、髪を洗うなどの動作は、腕を肩より高く上げるため負担が大きくなります。これらの動作を行う際は、脚立を使用して肩の高さを調整する、反対の手で支えながら行う、動作を分割して休憩を挟むなどの工夫が必要です。重いカバンを肩にかける習慣は避け、リュックサックや手提げの使い分けを行います。寝返り時は患側を下にしないよう注意し、起床時は健側から起き上がります。
痛みを我慢して無理に動かすことは、炎症の悪化や二次的な損傷を招く危険があります。「痛みが出る手前」の範囲で動作を行い、症状の経過を記録することで改善の判断が可能になります。市販の鎮痛剤は用法・用量を守り、長期連用は避けます。症状が2週間以上持続する、夜間痛が強い、可動域制限が進行する場合は、セルフケアを中止し医療機関を受診します。また、家族や周囲の人に症状を理解してもらい、必要時にサポートを求めることも重要です。
肩の痛みは日常動作の多くに支障をきたすため、生活の質(QOL)に大きな影響を与えます。具体的な対策を知ることで、症状があっても快適な生活を維持できます。
前開きの服やゆったりとした袖口の衣類を選択し、着脱の際の肩への負担を軽減します。シャツを着る際は健側の腕から袖を通し、患側は最後に通します。脱ぐ時は逆の順序で行います。下着は前ホックのブラジャーや、頭からかぶるタイプのスポーツブラを使用します。靴下やズボンの着脱時は、座った状態で行い、必要に応じて着脱補助具を活用します。ボタンやファスナーの操作が困難な場合は、マジックテープやスナップボタンの衣類への変更を検討します。
掃除機をかける際は、軽量タイプを選択し、細かく分けて作業します。洗濯物は低い位置で干し、高い場所は家族に依頼します。料理では、軽い調理器具を使用し、片手で操作できる道具を活用します。育児では、抱っこの際に両腕で支え、長時間の抱っこは避けます。オムツ替えやミルクの準備は、作業台の高さを調整し、前かがみの姿勢を避けます。家族や地域のサポートを積極的に活用し、無理をしないことが重要です。
デスクと椅子の高さを調整し、肘が90度、足裏全体が床につく姿勢を保ちます。モニターは目線よりやや下に設置し、首の前屈を最小限にします。キーボードとマウスは肩の力を抜いて操作できる位置に配置し、手首にサポートパッドを使用します。30分ごとに肩回し運動を行い、筋肉の緊張をほぐします。可能であれば、音声入力ソフトやタッチパッドの使用により、マウス操作の頻度を減らします。作業環境の改善に加え、上司や同僚に状況を説明し、業務配分の調整を相談することも大切です。
仰向けで寝る場合は、患側の腕の下にクッションを置いて支えます。健側を下にした側臥位では、患側の腕を前方のクッションに乗せて安定させます。枕の高さは首のカーブを自然に保つ高さに調整し、首への負担を軽減します。就寝前には温めのお風呂で筋肉をほぐし、軽いストレッチを行います。寝室の温度は少し涼しめに設定し、痛みによる発汗を防ぎます。痛み止めの内服や湿布の使用により、夜間痛を軽減することも重要です。
重いカバンは避け、軽量のリュックサックを使用して重量を分散します。電車やバスでは、吊り革の代わりに手すりを使用し、患側の腕への負担を避けます。座席が空いている場合は積極的に着席し、立ち続けることによる筋緊張を防ぎます。車の運転では、シートの位置と角度を調整し、ハンドルに手が楽に届く姿勢を保ちます。長距離移動では、こまめに休憩を取り、肩のストレッチを行います。可能であれば、通勤ラッシュの時間を避け、ゆとりのある移動を心がけます。
当院の施術の特徴をご紹介します。
※写真は同じ人物です。

※本施術は自由診療(保険適用外)です。効果には個人差があり、すべての方に同様の結果が出るわけではありません。リスクや副作用については、医師と十分にご相談の上、施術をご検討ください。
肩の痛みは筋肉疲労から重篤な疾患まで幅広い原因で生じますが、早期の適切な対処により多くは改善可能です。痛みの性質や随伴症状を正しく評価し、必要に応じて専門医の診断を受けることが重要です。
日常生活では姿勢の改善、適度な運動、作業環境の見直しにより予防効果が期待できます。夜間痛、高熱、可動域制限などの警戒すべき症状が現れた場合は、迷わず医療機関を受診してください。
軽度の症状に対するセルフケアも効果的ですが、症状が悪化する場合や長期間持続する場合は、専門的な治療が必要です。肩の痛みによる生活への影響を最小限に抑え、快適な日常を維持するために、早期対処と継続的な予防対策を心がけましょう。
何よりも大切なことは、痛みを我慢せず、身体からのサインを適切に受け止めることです。適切な知識と行動により、肩の痛みと上手に向き合い、健康的な生活を送ることができるはずです。